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ブルータス、嗚呼ブルータス。
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UPDATE : 2024.06.13
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UPDATE : 2024.06.13
今日は、ウィリアム・シェイクスピア作『ジュリアス・シーザー』のお話。
親父が多趣味でして、子供の頃は寄席に行ったり、演劇鑑賞したりといった休日がしばしばでした。
子供心にまったく楽しめなかったような気はしますが、今となっては貴重な経験をさせていただきましたね。
さて、ジュリアス・シーザー。
日本でもこの作品はあまりにも有名です。
そして、「Then fall, Caesar!」 という劇中での台詞は誰もが知るワンフレーズかと思います。
シーザーはカエサルと呼ばれることもしばしばですが、シェイクスピアがイングランド人であること、我々に馴染みのある呼び方、という点を踏まえて、以後「シーザー」と表記します。
シーザーが議事堂の階段で、ブルータス(誕生日は10月23日であり、奇しくも私と同日)に刺殺される名場面。
このときの最期の台詞を、さてどう読むか・・・。
それが今回のテーマとなります。
ーー「Et tu, Brute? –Then fall, Caesar!」
前半の一文は、「ブルータス、お前もか」または、「お前もか、ブルータス」
このあたりは好みの問題になりますが、
「まるも、テメェもか!」
「テメェもか、まるも!」
個人的には倒置法が好きなので、後者を選択したいと思います。
ここで問題となるのが、後半の一文。
「Then fall, Caesar!」
非常に悩ましいので、図書館に篭り文献漁りをしてみます。
ーーさぁ、世の翻訳家たちはどのように訳しているか・・・。
選んだ翻訳家は大御所の先生たち。
▼安西徹雄先生 訳
(光文社古典新訳文庫)
お前もか、ブルータス。なら、死ね、シーザー。(絶命する)
▼大場建治先生 訳
(研究社シェイクスピア選集6)
ブルータス、お前もか。ああシーザーよ、やんぬるかな。[死ぬ]
▼小田島雄志先生 訳
(白水ブックス・シェイクスピア全集)
おまえもか、ブルータス!死ぬほかないぞ、シーザー!(死ぬ)
ーーThen fall, Caesar!
この一文が命令文であることから、安西先生の「なら、死ね、シーザー」がしっくりきます。
シーザーは時の最高権力者ですし、自身を三人称的に呼んでいることを鑑みると納得の訳。
※余談ですが、Caesarは権力を誇示する意味合いも込めて、しばしば自身を「Caesar」と呼んでいたようです。
大場先生の「やんぬるかな」・・・んー、なんだかザワつきますね。
大辞林によると「漢文訓読調の語」となっていました。
そのあたりに違和感を覚えるのかもしれません。
普段、口語で漢文に触れる機会は少ないですからね。
「死ぬほかないぞ」・・・さすがの小田島先生。
独特の言い回しが燻し銀ではありますが、「ほかない」に少し抵抗があります。
この作品は劇の台本です。
なので、主役である最高権力者が殺されるとき最期の言葉として何を選ぶのか、
劇のクライマックスとしてどう盛り上げるのかがポイントになってきます。
日本の時代劇であれば、「無念!もはやこれまでか!」くらいのノリだと抜群にキマリます。
ーー結論(個人的見解)。
大御所の先生たちの前で差し出がましいようですが
さて、そろそろ締め括りたいと思います。
「ブルータス!お前もか!シーザーよ、これにて閉店ガラガラ!」(絶命)
いかがでしょうか。
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